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2020年 NO.722


「罪を犯さないためです」の真意


 第1ヨハネの手紙2章1節の「罪を犯さないために、これらのことを書き送った」と

ありますが、ヨハネはこの「罪を犯さないため」とは、どういう意味で語っているの

でしょうか?その意図は何だったのでしょうか? 一つはっきり言えることは、クリス

チャンが「罪を犯さない」ようになるのは、御国に入ってからです
それまで、クリス

チャンが地上にいるときは、罪深い肉を持った者として、命を閉じるときまで道徳的な

罪を犯さない人間になることは出来ません。キリストの再臨の時まで、クリスチャンは

「救われた罪人であり」、罪深い肉の性質を脱ぎ捨てることはないのです。ですから、

決して罪を犯さない人間に成ることはあり得ません。それなのに、ヨハネが「これらの

ことを書き送るのは、あなた方が罪を犯さないためです」と言いました。それは、その

当時に既に反キリストが現れて、イエスがキリストであることを否定する者が、多く出て

いたからです。イエスがキリストであることを否定したら、御国に入ることは出来ま

せん。クリスチャンが御国に入れなければ、「罪を犯さない者」にされることはないから

です。ですから、ヨハネは「罪を犯さないためです」と書いている時制は、接続法の

アオリスト形を用いました。このアオリスト時制は、時間に関係ありません。又、

接続法
は、まだ実現していないことを表現する用法です。即ち、予想や期待を推量して

語ることです。
ですから、2章1節の意味は、いつということは断定せず、御国に入る

ことを期待して「罪を犯さないためです」
とヨハネは書いているのです。

又、3章6節では、「誰でもキリストにある者は、罪を犯し続けません」とあります。

この場合は現在形で記されています。ギリシャ語の現在時制は、継続した行為を意味

するためにも用います。ですから、この箇所の翻訳は「誰でもキリストにある者は、

習慣的に罪を犯し続けません。」が正しい訳です。即ち、ヨハネはクリスチャンが罪を

犯す事実を否定していません
ですから、2章1節の「御国に入った時に罪を犯さない

者」
となるという主張と完全に調和しています。このように、ヨハネは決してクリスチャ

ンが、この地上で罪を犯さない人間に成ることについて書いているのではありません。

しかし、もし「御父と御子を否定する罪」なら、「死に至る罪」になります。キリストの

贖いを否定したら、当然御国に入る期待は持てません。このような惑わしが既に起こって

いたと言うことです。反キリストの出現は、患難時代だけではありません。今もイエス・

キリストが肉体を取って来られた救い主であることを否定する「エホバの証人」の存在が

世に現れています。ですから、私たちは真理の霊と惑わしの霊とを見分けなければ成りま

せん。すると、ヨハネの手紙の意図は何かと申しますと、ヨハネは兄弟同士が憎しみ会う

罪に陥ってはいけない事を願って、「罪を犯さないために(御国に入るために)」と書き

送ったということです
それは、兄弟同士が憎しみ会うことは、キリストの教えから離れ

て行く事になるからです。しかし「互いに愛し合う」ことは、キリストの教えに留まる

ことですから、何度も「互いに愛し合いなさい」と、ヨハネは口酸っぱく言い続けまし

た。これが手紙を書いた目的です。その結論は5章13節にある、「これらの事を書き

送ったのは、絶対主の御子の名を信じるあなた方に、永遠の命を持っていることを悟ら

せるためです。また、絶対主の御子の名を信じ続けるためです
というのが、ヨハネの

結論です


 ですから、「罪人が決して罪を犯さない者になる」というのが、この書の目的ではな

く、絶対主の御子の名を信じ続けることがその目的です。なぜなら、永遠のいのちに入る

ことが「罪を犯さない者」になるからです。
ですから、誤解して読むことのないように

して頂きたいのは、クリスチャンが、罪を犯さない生涯を送ることなど、あり得ないこと

です。しかし、ヨハネは、反キリストの罠にはまらないように、クリスチャンが、「習慣

的に罪を犯し続ける」ことを否定しています
即ち、憎しみを続けず、自分の罪を

に認め続け、告白し続けることです。さもないと悪魔の餌食(えじき)になります。だから大切なの

は、罪人であるからこそ、罪から離れ、キリストに留まり続け、信じ続けて行くという

ことなのです。



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