(起) 使徒13章38、39節の御言葉から、「私たちの罪の原点は、自分を義とするという
ことにある」ということ事を学び、「自分を義とする思いを砕いて、キリストにあって生きる
生き方」を学びたいと思います。
(承) さて、38節を見ますと、「イエスを通して、罪の赦しの福音が、あなた方にのべ伝え
られている」とあるように、私たちもこの福音を聞き、「イエス・キリストを信じる者は
誰でも、このイエスによって義とされるのです」ということを知って、信じました。これは
「罪の赦しの福音」ですから、罪からの救いは、当然「自分は罪人である」ということを
自覚して、信じたはずです。しかしながら、信じた後になって「自分の罪が分からない」と
いう人が出てきました。そかも、自分の過ちを指摘された場合、クリスチャンでも必ず弁解が
出てきます。なぜでしょうか。もし、信じたときに、自分が心底罪人であることが分かって
信じたのなら、そのまま「ごめんなさい」と言って、裁きも何もかも受けとめて行く心を持つ
はずです。それなのに、過ちを指摘されると必ず弁解から始まり、口では「ごめんなさい」と
言いながらも、心の中で、「謝ったからもういいでしょ」という気持ちをもって、謝っていた
ということになります。それは、「もうこれ以上怒られたくない。何とかこの責任の報いから
逃れたい」という動機から謝っていることになります。だから、絶対主から、「お前は罪人で
あることが分かっていない」と言われてしまうのです。
(転) では、なぜ「何とか報いを逃れさせてほしい」という思いが出てくるのでしょうか。
それは、「少しぐらい良い部分もあるはずだ」という、自分の中のわずかばかりの義を主張する
思いが腹の底に潜んでいるからです。実は、これが私たちにとって一番の罪なのです。しかも、
この罪の原点はルシファーです。ルシファーは、全きものの典型として造られ、知恵に満ちて
いました(エゼキエル書28:12)。しかし、彼はその与えられた能力を、自分を崇めさせる
ために使ったのです。彼は、被造物であるにもかかわらず、自分を誇り、自分の栄光を表そうと
しました。そして、「自分の中には美しさがある。だから、絶対主の星々の遙か上に自分の
大座を上げて、いと高き方のようになろう。」という傲慢な意識を抱いてしまったのです。
その結果、「ルシファーは絶対主の手によってよみに落とされ、穴の底に落とされました」
(イザヤ書14:12~15)。実は、そのルシファーの名残が私たちの中にあるという
ことです。すなわち、「被造物が絶対主の前に思い上がり、自分の義を主張して、過ちを
犯しても弁解しようとする」、この思いこそが、ルシファーの罪が、私たちの心の奥底に入り
込んでいる証拠です。私たちが、弁解しようとするのは、ルシファーの罪の根と同じものです。
だから、私たちは、心の奥底にある、「自分を義としようとする思い」を砕かなければなりま
せん。その思いが出てきたら、「自分はそんな弁解できる者ではない」と、自分で自分を
否定すべきです。しかし、それはすごく勇気がいることです。なぜなら、それをすれば、
弁解できない一切の責任が降りかかってくるからです。弁解しない自分は、「まるっきり
罪人で、ダメ人間だ」という、その自分自身を認めることになります。でも、勇気をもって
その世界に飛び込み、「本当に自分が罪人です」と言う者に対して、絶対主は、「そういう
お前のために、わたしはイエスを送ったのだ。だから、イエスの故にお前を受け入れる」と
言って下さり、「お前はもう自分の義で生きるのではなく、これからはイエスの義によって
生きて行きなさい」と言って下さるのです。これが本当の救いなのです。
(結) 私たちは、信じてから、これまでの長い間、口では「罪人だ」と言いながら、
心の中で、自分を義とする思いを当たり前のように温存してきました。しかし、それこそが、
私たちの罪の原点です。だから今日、最初にお読みした御言葉(使徒13:39)にある
ように、「モーセの律法では義とされることができなかった」という御言葉によって、人の
どんな義も絶対主の前に義とされない、という事実をはっきりと認め、自分が今まで義だと
思っていたものは全部偽物だったと気付いて下さい。そして、自分を義としようとする思いを
砕いて行きましょう。これは一度砕いたら、それでOKということではなく、自分を義とする
罪は、死ぬまで消えることはありませんので、私たちはこれを ずっと砕き続けて行くべき
です。それを砕いたなら、あと私たちに残るものは、生まれながらに罪人である自分しか
ありません。しかし、それが自分自身なのです。ですから、「イエス様にあって、生かさせて
下さい」と言うのが、私たちの祈りです。どうか、この真理にはっきり立ち、イエス様にあって
生きる新しい生き方を始め出しましょう。
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