マタイ伝１６章のツロの女に対して、｢あなたの信じ仰ぐ心は、見上げたものです｣と、
イエス様が言われた意味を考えてみます。まず、ツロの女は、イエス様に娘の癒しを願っ
たのですが、異邦人でしたので､イエス様からはっきりと断られました｡｢私は､イスラエル
の家の失われた羊以外の者には､遣わされていません｣と。それなのに、女はなお食い下
がって助けを求めました。すると､主はグサッと｢子供たちのパンを取って､子犬に投げて
やるのは良くないことです｣と突っ撥ねられたのです。そこまで拒否された女が
｢あなたの願い通りになるように｣と、受け入れられた理由は何だったのでしょうか？
その答えは、マタイ１８章３節にあります。弟子たちがイエス様に尋ねました。｢天の
御国では、誰が一番偉いのですか｣と。その時、イエス様は幼子を抱き、｢この幼子の
ように自分を低くする者が、天の御国では一番偉いのです｣と言われ、｢自分を低くする
こと｣が天の御国に繋がる奥義であると言われたのです。この事から分かるように、
女の願いが受け入れられた理由は、彼女は自分を低くしたからです。ここに、イエス様
の堅い心を動かした理由があったのです。すなわち、彼女は｢主よ！お言葉通りです。
でも子犬でもその主人の食卓から落ちるパンくずは、頂きます｣と言って、彼女は「選民
のイスラエルに与えられたパンくずでいいのです。そのおこぼれに預からせて下さい」
と、自分を低くしました。この女の言葉はイエス様の心に響きました。そして、女が
異邦人であるにも関わらず、｢女よ！あなたの信じ仰ぐ心は見上げたものです｣と、感動
されたのです。そして娘が癒やされ、異邦人もイエス様に受け留められたのです。
これを見ていくと、主に受け入れられるポイントが分かります。それは、人間の正しさ
や、律法の行ないではなく、幼子のように自分を低くする者が絶対主とイエス様に好まれ
る徳質（絶対主の前に持つ特質）なんだということです。それもその筈、絶対主の側から
見ると、人間は生まれながらに罪人であったにも関わらず、罪人に憐れみを掛け、御子の
命と引き換えに贖われたのです。そこまでされた絶対主は、最初から人間が罪人である
ことは承知の上で、救って下さいました。ですから、人間に求められているものは、
只遜りしかありません。だから、その遜りの徳質を「絶対主の前に自分を低く
して表わすこと」によって、罪人でも絶対主に受け入れられるのです。その遜りの心は、
あの異邦人の百人隊長も持っていました。イエス様は百人隊長に、｢これ程の信仰を
イスラエルの中で見たことがない｣と 同じように言われたのです。彼もまた、「自分
を低くした一人です」。このように、主の前では、人が自分をアピールすることよりも、
遜ることが一番大事であることが分かります。逆に､絶対主は傲慢な人間を一番
嫌われます。それは、絶対主がイエス様を送られたのは、｢義人を招くためではなく、
かえって、罪人たちが悔いて考えを入れ替えさせるため｣（マタイ９：１３）であった
からです。ですから、私たちも主に受け入れられる近道は、本気で下手に出ることです。
それが見せかけの遜りであるなら、自分をアピールするだけで、絶対主に繋がることは
ありません。この真理を絶対主の側から考えて下さい。私たちは、絶対主の子として、
養子縁組して頂いた者です。ならば、絶対主の家の者として絶対主の考えに立って、
ものを考えるのは当然です。それなのに、自分を崩さずに、一生懸命に自分を保とうと
するなら、絶対主の家の者と見なされず、離縁されて泣いて歯ぎしりするのです。
結婚した女は、嫁ぎ先の家の人間です。いつまでも実家の人間であるなら、利害が異な
り裏切り者とされます。ですから、私たちも絶対主の家の人間として、いつも絶対主の
側で考え、絶対主が何を求めておられることかを考えるべきです。それは、ひとえに養子
縁組された者として「自分を低くして、下手に出て仕えていくこと」です。これこそが、
絶対主が人間に求められる心です。そういうものが、絶対主の家で受け入れられ、好かれ
て行くのです。
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